中国で出会ったシリア人の男性が無事でいますように。

中国で出会ったシリア人の男性が無事でいますように

10年程前に中国に留学していた時、同じ学校にシリアから来た男性がいました。

クラスは彼が初級、私が中級だったので最初は全く交流がありませんでしたが、学校行事で留学生全員が集められる事があり、そんな中で彼と知り合いになりました。

彼は英語も中国語も余り出来ないので、私とのコミュニケーションは主にノリとジェスチャーでした。とてもマイペースで、皆で集まっている時もよく勝手な行動を取っていました。

その辺に置いてあった誰かのノートに勝手に私の絵を描いていた事があり、「そんな所に描くな。迷惑だろ」と思った記憶があります。

彼はシリアではテレビの仕事をしていたと言っていました。絵が好きだと言う事でスケッチブックを見せてもらった事があります。

大柄で大雑把な感じの彼とは裏腹に名刺位の小さな紙に細かく何かが描かれていました。抽象画のような風景画のような不思議な絵で、全部セピア系で描かれていたのを覚えています。

彼は一応イスラム教徒でしたが、普通にビールを飲んだりして、あまり宗教熱心な感じではありませんでした。

彼とは知り合い以上のなんでもなく、たまにすれ違うと「その服の色の組み合わせがとてもいい」と褒めてくれたり何だかわからないけどハイタッチをしたりする程度の仲でした。

一度だけ、学校の集まりで一緒に飲んだ時に、彼が真剣に、たどたどしい英語でこう言いました。「シリアは本当は危ない国じゃないんだ。とてもいい国なんだよ。色んな人に誤解されていて悲しいんだ。いつかシリアに遊びに来てほしい」

私は「いつかシリアに行ってみたい。遺跡もあるし。その時は案内してね」のような返答をして、でもやっぱり語学の壁によってそれ以上深い話は出来ないまま留学期間を終えて帰国し、その後彼に会うことはありませんでした。

それから少しして、シリアの情勢は大きく変わりました。今ニュースを見るにつけ、彼の事を思い出します。明るくて大げさで適当だった彼の小さなセピア色の絵。

彼が元気である事を、そしてシリアが少しでも早く平和になる事を祈らずにはいられません。