若きウェルテルの悩み@宮島

学生時代に方々を気ままに旅をするのが好きでした。
そのときは姉と一緒に四国を一周したのち、
しまなみ海道から本州に入り広島のユースホステルに宿泊していたときのことです。

共用スペースにはたくさんの外国の方がいて、
私たち姉妹は片言ではありましたが、
あるイギリスの紳士と会話を楽しんでいました。

その様子を明らかにじっと見つめる一人の外国人青年がいて、
私たちとイギリス紳士は会話へと招き入れました。
彼はフランスから一人旅に来た青年で、
日本語も英語もそれほど堪能ではありませんでした。
(イギリス人紳士との発音の差異があったのかもしれません。)

ですから終止口数は少なく表情も物憂げです。
翌日はどこへ行くのかなど話を進めていたところ、
そのフランス人青年は宮島へ行くということがわかりました。
実は私たち姉妹の旅程も安芸の宮島散策であったのです。
それが分かるや否や、無口であったフランス青年は
私たちと一緒に是非宮島に行きたい。自分一人だと心細い…
ということを必死で訴えかけてきたのです。

私たちは宮島観光のあともすぐに出向きたいところがあり
出発は早朝になるということを伝え、それでもOKか?と尋ねましたが、
とにかく一人じゃ心細いというので
私たちの時間に合わせて一緒に宿を出て向かうことになりました。

翌朝ユースホステルの玄関前にはきちんとフランス青年はいて
私たちを待ってくれていました。
まさか外国の方と一緒に旅をするとは思ってもみませんでしたが、これも縁なのです。

宮島までの周遊船の中でも彼は静かでした。
自己主張の強い外国人というイメージは彼をとおして払拭され、
若きウェルテルの悩みと言わんばかりの物憂げな表情に、
さすがフランスは違うねと姉とささやきあいながら彼を見ていました。

私たちが訪れたとき、ちょうど大鳥居の改修工事が行われており
周りに足場が組まれていたのですが、
宮島に降り立ってからのフランス青年は
今まで見たこともないくらい表情が生き生きとしてきました。

そして歩きながら、ビューティフル、グッド…と
私たちでも分かる英単語でしきりに感動を伝えてくれました。
私たちも初めて訪れた宮島でありながらも
自国が褒められていることが嬉しくて鼻が高いような気分でした。

彼はゆっくり宮島全体を見て回りたいというので
先を急ぐ私たち姉妹と行動を別にすることになりました。
Eメールアドレスの交換をしてその後も何回かは連絡を取り合っていましたが、
この旅での最高の思い出として
彼と過ごした貴重な時間が忘れられません。

英語の勉強の切っ掛けになったパーティ
JICAの張さんとうちの子は仲良しでした