当たり前だから新鮮な疑問

私は大学時代にフランスのパリに一年間留学していました。

当初フランス語も覚束ず、
なかなかコミュニケーションがとれないでいましたが、
日本語を学んでいるフランス人の友人たちは
とても温かく接してくれました。
中には随分日本語が堪能な学生さんもいて、
顔を見なければ日本人かと思ってしまいます。

そして時々、彼らから日本語に関する色々な質問を受けました。

「”ある”と”いる”の違いは?」
「男で”私”っていうのはおかしいの?」
「ますとですの使い分けは?」

など、日本人なら当たり前過ぎて思いもよらないことばかりでした。
そのため、うまく答えられず頭を抱えてしまうこともしばしばでした。
でも、そうやって日本語について改めて考えてみることは
なかなか興味深く、楽しいものでした。

さらに、逆に私も彼らに、フランス語に関する質問をぶつけていました。

「大過去と半過去の違いって?」
「どうしてネクタイが女性名詞なの?」
「文法的には合っているのに、
どうしてこの言い方はしないの?」
など、フランス人にとって、
おそらく当然過ぎて考えたこともない質問ばかりで、
困らせてしまったことでしょう。
それでも彼らなりに考え、丁寧に教えてくれました。

留学生活での経験を経て、私は日本語教師になることを決意しました。
何気ない言葉への疑問が、私をここまで突き動かしたのです。

今では大勢の外国人に囲まれ、日本語教師として奮闘しています。
彼らの疑問は常に新鮮で、逆に私が「教えられる」こともしばしばです。

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